Vol.1 新文芸坐編
新文芸坐入口
「名画座」とは、いったいどんな場所なのだろうか……?
案内人は、のむみちさん。名画座の上映案内フリーペーパー『名画座かんぺ』を発行している、いわば今の名画座を知り尽くした方だ。
同行するのは、漫画『とんかつDJアゲ太郎』の原案を手がけるイーピャオさん。
ふたりで都内主要5館の名画座を1日で行脚、名画座の魅力に迫る!!
今日は、のむみちさんの案内のもと、イーピャオさんとともに、都内にある主要な名画座5館を一日で廻ります。タイトなスケジュールですが、よろしくお願いします…!
まずは、私の勤務先(古書往来座)にも近い、新文芸坐さん。池袋駅東口を出て北に歩いた、マルハンのビルの3階にあるの。イーピャオくんは来たことある?
新文芸坐さんは、以前池袋が帰り道だったとき、よく通ってたんですよ。
そうなんだ!
友の会に入ってたんですが、更新が途切れてしまって……今日は久しぶりに来ました。
私はね、初めて来た名画座がまさにここで。初めはシニア率の高さにビビったけど、慣れちゃえばもう全然へっちゃら!清潔で明るいし、スクリーンの大きさも名画座の中ではピカいちだし、私大好きなんだ。
廊下も客席もきれいで、居心地いいですよね。
あとね、新文芸坐は、ロードショーから間もない近作が2本立てで観られるっていうのも大きな特徴かな。だから観逃しちゃった作品を意外な組み合わせで観られるの。狙った作品よりもう一本の方が面白くて、得しちゃった…なんてこともあったりね。
なるほど、そういう出会いは2本立てならではの醍醐味ですよね。意中の子じゃなくて結局その友達と付き合うケースみたいなものか…
あと、入り口の券売機も新文芸坐の特徴だね。「名画座かんぺ」で取り上げている名画座5館の中で、チケットを券売機で買うのはここだけなんだよ。

システムがわかってないと、ちょっとまごついちゃいますよね。
新文芸坐で独特といえば、ドリンクバーのシステムがあるの。

ドリンクバーってけっこう出ます?
オールナイトのときに若い人が来られるとよく出ますね。
なるほど……! 私も飲む方なので、こういうのがあると有り難いですね。……あっ!アセロラソーダもある。
珍しいですね……!
ホントだ(笑)!ドリンクバーは冷たい飲み物だけで、ホットコーヒーは別になってんだよね。
あと、近所の飲食店(サグーン)と提携して、食べ物も売ってんのよ。
カレーパンが美味しいらしいんだけど、すぐに売り切れちゃうから、予約して取り置いて貰わなくちゃいけないの。今日はそのカレーパンをイーピャオくんと食べ……
……すいません。
……えっ!
……頼み忘れました……。
えー…腹すかせて来たんですけど……カレーパン、一回も食べたことなくて楽しみにしてたのに……。
……申し訳ないです。このカレーパンじゃダメですか?
…大丈夫★
ロビー
ここが、レジの書籍コーナー。今日は「時代劇特集」の初日なんだけど、それにあわせて選書されてるの。会期中かかる作品のDVDも売ってるから、スクリーンで感動した作品を買って帰ることも可能なんだよ~。
本はここだけじゃなくて、横にもありますね。ちょっとした書店みたいになってますね。
下の中古パンフレットは、古書店の「@ワンダー」さんが出してるの。
洋画から邦画までありますね。他にも、こういったリトルプレス系も取り揃えて。
あっ、見て見て、『映画横丁』は私も対談で出させてもらってんのよ。
『映画横丁』

本棚の横は、上映している特集ゆかりの資料が展示されてて。
その隣には、トークショーに来られた役者さんのサインがズラリと並べられてる。
吉永小百合さん、やっぱり字も上品なんですね……!!
ところでこの壁に貼ってある「プロ野球選手名鑑」のようなものは何でしょうか……?
アハハ。これはスタッフの方々の一覧表だね。
スーパースターシステムというのがあるんですね。「No.1スタッフ」を投票で決めるのか…
この「今月のNo1スタッフ」の関口さんって方は、名画座界隈で場内アナウンスが上手いって有名な方なの。
アッ!知ってます。ディスクジョッキー顔負けの流れるようなパフォーマンスをされる方がいらっしゃるなと私も気になっていたんですよ。この方だったんですね……!

スタッフの中でよくここで番組を組んでるのは花俟(ハナマツ)さん。新作に力を入れていて、最近では大寺眞輔さん(※映画評論家)の「新文芸坐シネマテーク」っていう映画館ではあまり観られないヨーロッパ映画を上映して、その後60分講義するという企画をプロデュースしてるの。もう定番企画って感じだね。
そうか、接客だけでなく、番組編成も名画座スタッフさんの大事な仕事ですよね。
この横が喫煙所なんだけど、映画館を出ずに吸えるのは喫煙者には嬉しいだろうね。だいたい喫煙できるのって館外だからね。
けっこう広いんですね。
あんた(トマソン社社主)入ったことある?
淡島千景のトーク(2009年4月『てんやわんや』上映後)のサプライズゲストで淡路恵子さんが来てたときに中でタバコ吸ってたら、ご本人と一緒になったことがあります。
それすごいね……!淡路恵子っていったら、昔の女優さんの中でも一番タバコが似合う女優さんだよ!その姿を生で見られたなんて、ウラヤマしすぎるゥ~!
あと、あそこに電話があるんだけど、使ってる人を見たことがない(笑)。
緑でもピンクでもない新型の公衆電話ですね……!はじめて見ました。
新型だけど、公衆電話…新しいんだか古いんだかよくわかんない(笑)。
劇場側
反対側の壁には、今日上映されてる作品の記事のコピーがありますね。
映画の前後はこの掲示板の前に人だかりができるんだよ。
どの役者さんだとか確認するわけですね。
まだ記憶が鮮明なうちにね(笑)。
拡大鏡の貸出をされてる……!ホスピタリティがありますね……!
そして壁際には次回の特集のお知らせが。「渥美清特集」か、寅さんがアフリカに行った映画があるんですね。
寅さんじゃなくて渥美清…ね。寅さんはアフリカには行ってないと思うよ…。
アッ!そうでした……!
オールナイトのポスターも貼られていますね。この副題がひとひねりされていていいですね……!
そうなの。巧いんだよ〜。
「色々あるけど、家族にカ・ン・パ・イ! ホラー家族愛ナイト」「分身分身また分身」これは声に出して読みたくなるぞ。…それにしても分身映画だけでプログラムが組めるんですね!
キャッチもすごいです!
こういうのもさっきの花俟さんが考えてるんだよ。妙にアツいって、最近評判なんだよ。
名画座でオールナイトは他はやってないですよね。
新文芸坐では毎週土曜日にやってるよ。最近ギンレイさん(飯田橋)で月に一回やってるけど、それくらいかなあ。
徹夜でオールナイトで乗り込む勇気がまだなく、未知のセカイ…
オールナイトは、番組内容もアニメあり特撮ありと幅広く、トークショーもあってゲストも豪華なの。
オールナイトもそうだけど、声出しOKな「絶叫上映」とか、「応援上映」とか、他の名画座ではやらないような、若い人たちに興味を持ってもらえる企画をやってて、素晴らしいと思うんだ。
奥のどん詰まりがお手洗いですね。動線が一直線になってるから、飽きさせないために、そばにポスターを並べて貼る工夫がなされてるんですね。
そうなの。入場前にもここに並ぶからね。開場を待つ間に、次の特集にも興味を持ってもらえるよう、工夫されてるってワケ。
トイレは新文芸坐名物で、男子の行列がすごいの。ただ、雷蔵特集のときは、女性の方が混む(笑)。
場内も、初めて入った時は、大きくてビックリしたなあ。座席も座り心地がいいし、前の人の頭もスクリーンにかかったりしないし。音響もいいしね。私は、割と前の席が好きで、前から3列目くらいがベストかな。新文芸坐の一番のウリはやっぱりスクリーンだと思う。他館で観た作品でも、新文芸坐でかかるとなれば、また観に行っちゃうんだよね!
う~ん、愛される名画座には、ワケがありますね。入りなおそうかな、「友の会」…

★次回は神保町シアター!
構成:トマソン社
登場人物

のむみち
1976年宮崎県生まれ。池袋古書往来座店員。
2009年に旧作邦画に目覚め、名画座と出会う。
2012年にひと月の都内名画座スケジュールを一覧表にしたフリーペーパー「名画座かんぺ」を創刊。
2016年に5年目を迎えた。

イーピャオ
東京都出身。ジャンプ+にて連載中の漫画『とんかつDJアゲ太郎』原案担当。
普段は会社員。